平成22年度バイオマスタウン構想実現に向けての取組み

堆肥の水田利用

県内の稲作の現状

県内の水田面積は47,900haで、そのうち豊橋市には2,460ha(平成22年市町村別耕地面積、東海農政局)存在します。
県内で最も栽培が多いのは、愛知県が育成し、県の奨励品種になっている『あいちのかおり』(42.1% *1)で、豊橋市では『コシヒカリ』のシェアが最も高く(48.1% *2)なっていました(図1,2)。

*1 水稲作付見込調査結果(作付比率、H21東海農政局食糧部)の品種別作付見込比率を元に県園芸農産課が試算した栽培面積。
*2 JA豊橋におけるH22年農産物検査実績より。

グラフ
表1 主要品種の作型 1)
品種 早晩性 田植え 稲刈り 施肥量
あいちのかおり 中生 5月下旬~6月上旬 10月上・中旬 分施:10(kgN/10a)
全量基肥:6~10(kgN/10a)
コシヒカリ 極早生 4月下旬 8月下旬 分施:8(kgN/10a)
全量基肥:3~7(kgN/10a)

分施は地力中庸水田を想定(培養窒素3~4(mg/100g)、全窒素0.13%)
全量基肥は培養窒素量と全窒素量からの換算表による。
培養窒素量:湿土30℃4週間静置培養により発現する窒素量

県内の営農規模

愛知県内で大規模な営農をしている経営体は表2の通りです。
愛知県農業総合試験場への聞き取り調査の結果から、このうち東三河で46軒、県内で412軒が水田作を中心とした農家だそうです。県内軒数が表2の合計値より多くなってしまったのは、集計時期・方法の違いによるものと考えらえます。いずれにしても、大規模経営体のうち大部分が、水田作を中心としていることがわかります。

表2 県内の規模別経営体数
エリア 10~20ha 20~30ha 30~50ha 50~100ha 100ha以上
豊橋市 11 4 1 0 1 17
東三河 38 8 2 1 2 51
愛知県 186 63 51 21 8 329

農林業センサス(2005)(経営耕地面積規模別経営体数)

販売先

昨年度の西尾市への聞き取り調査から、堆肥を使用したコメの栽培はコストがかかり、ブランド化をして有利販売が出来なければ、採算が悪化することが指摘されました。 米は、他の農産物と異なり、収穫後の調整施設(乾燥・調整)を必要とするため、大規模な経営体だからと言って、必ず独自の販売ルートで販売しているとは限りません。

水稲への堆肥の利用の可能性

堆肥の肥効

水田への堆肥施用の目的*1 には大きく、1.地力の回復(長期的な肥料供給源)、2.肥料の節減(その年の肥料供給源)、があげられます。

  1. 地力の回復について
    現在のコンバイン収穫では、稲わらは切断されて水田に戻されるため、収穫によって収奪される養分はモミの分だけで、地力の低下は見られません。近年の米価低迷もあり、堆肥による地力の向上の必要性は低いといえます。 また、近年増加している作業受託・経営受託をしている農家にとっては、いつ返還させられるかわからない他人の水田について、長期的な視野で地力を考える意欲がわきにくいという問題もあるそうです。 転作で小麦・大豆作をすると、乾土効果*2 により地力が低下しますが、その場合は、堆肥の施用が有効と考えられます。
  2. 肥料の節減について
    堆肥は一般的に肥効が非常に緩やかで、もし堆肥だけで肥料分をまかなおうとすると、最も肥料を必要とする出穂期に養分不足となってしまいます。そのため、堆肥は基肥の代替と考え、化成肥料の追肥との併用の必要があります。 原料によって肥効が異なることにも考慮が必要です。一般に、牛糞堆肥は肥効はほとんど期待できず(1年目の窒素放出量は施用量の5%程度)、豚糞・鶏糞堆肥は肥効を期待できません 2)。

*1 堆肥施用の目的:有機物の施用効果は、物理性・化学性・生物性の全てにわたりますが、ここでは化学性に限定して話を進めました。
*2 乾土効果:土壌を乾燥させることにより、未分解の有機物や、微生物の死菌体が分解を受け、植物養分として供給されること。

堆肥使用米と慣行米の収支比較

収入については、ブランド化による単価の向上が考えられますが、調整施設の問題から区分管理が難しく、ブランド化に至っていないのが現状です。
支出については、堆肥購入費・散布費が増加し、基肥購入費が減少します。 中には、自家製堆肥を耕種農家の圃場に散布まで無料でする酪農家もいます。そういう条件であれば、収支は成り立つかもしれません。ただし水田への散布には、専用の散布機を使用しないと、降雨によって作業日が天候に左右されてしまいます。 行政による散布機の無償貸与等の支援策が期待されます。

東三河における取組み

平成23年1月24日、愛知県東三河農林水産事務所農業改良普及課(以下東三河普及課と呼びます)鈴木潤様、河野朋之様に話を伺いました。
東三河普及課ではJAひまわりと共同で、平成18年から5年間にわたり、水田から回収したのわらを酪農家に渡し、酪農家から返送された堆肥を水田に散布するというリサイクルループ構築試験を実施しています。 堆肥の散布により徐々に地力が高まっており、平成20年度からは、無化学肥料で栽培が可能になったそうです。 平成21年度の収量は、目標の480(kg/10a)はクリアしたものの、慣行に比べるとやや劣りました。 稲わらを回収するためには、ロールベーラー等の特別な機械が必要で、前項の散布機とともに支援が望まれます。 市内ではブロックローテーションに取組んでいないため、西尾市のような散布時期調整や地力の低下に関する問題は起こりにくいようです。 鈴木さんいわく、堆肥利用が推奨されるのは、稲わらを持ち出してしまうWCS*1 、不耕起V溝直播*2 を実施している水田とのことです。

*1 WCS:Whole Crop Silage の略。収穫した稲を稲わらごと牛に給餌すること。
*2 不耕起V溝直播:前年秋の収穫以降耕うんせず、春水田に溝を掘り、そこに種籾と肥料を落とし栽培する、省力化技術。元肥を種籾と同じ溝に散布するため、PK肥料を入れると肥焼けを起こす可能性があり、N単肥を行っています。

まとめ

以上の調査結果及び昨年度の西尾市への聞取り調査の結果をまとめると、導入の対象となるのはWCSや不耕起V溝直播に取組む圃場で、スムースに導入させるためには、(1)散布機・ロールベーラーの無償貸与等支援、(2)雑草種子が死滅した高品質堆肥の低価格での提供、(3)施肥設計・散布場所調整に関する自治体の支援が不可欠であると考えられました。

参考文献

1) 農作物の施肥基準 愛知県 平成18年2月 農業改良普及資料815号

2) 有機物資材利用ハンドブック 愛知県 平成15年2月 普及指導部資料No.318

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