平成22年度農林水産物等輸出課題解決対策事業
「次郎柿の品質を保持した最適輸送方法の確立」
実施報告書(要約版)
株式会社サイエンス・クリエイト
1.事業の目的
近年の世界的な日本食ブームやアジア諸国の急速な経済発展に伴う富裕層の拡大により,高品質で安全なイメージを有する日本産農産物の輸出機会が増している。特に香港は,これまでに国内各産地が輸出先として様々な取り組みを進めた結果,農林水産物の全輸出額の24.6%(平成22年)を占める最大の輸出先となっている。愛知県豊橋・田原地域においても,特産物である「次郎柿」の香港への輸出を進めているが,輸送段階で軟化果実の発生がしばしば起こり,輸出量拡大の阻害要因となっている。そこで本事業では,軟化果実の発生を抑制する輸送方法を確立することを目的として輸送試験を実施して,輸送温度や梱包方法が,香港向け次郎柿の着荷時及び着荷後の保存期間における軟化果実発生率に及ぼす影響について調査した。
2.材料及び方法
供試材料には、愛知県豊橋市にて栽培され平成22年11月8日に収穫された早生次郎柿及び21日収穫の普通次郎柿についてそれぞれ120ケース(1ケースあたり36個及び48個)を用いた。JA豊橋の選果場にて,通常の出荷形態である段ボール箱内にサンプルの半数を梱包し(従来梱包区),残りの半数を厚さ40μmの低密度ポリエチレン袋を内袋として用いた段ボール箱内に密封して梱包した(フィルム梱包区)。その後,奈良県中央卸売市場に搬送し,2℃及び15℃設定のリーファーコンテナに積載し,神戸港より香港に向けて海上輸送した。収穫から8日後,香港の仲卸会社にて梱包を開封し,輸送した全果実について軟化の有無を柿選果場職員及び柿生産者が手で触って確認し,軟化果実の発生数を記録した。その後,果実を10℃設定の冷蔵庫及び室温にて保存し,軟化果実の確認及び計数を続けた。なお,普通次郎柿を対象とした実験では,等級が軟化果実発生に及ぼす影響を検討するため従来梱包区においてはさらに「秀品」と「良品」とを区別し,また,フィルム梱包区には「優品」を用いた。早生次郎柿を対象とした実験では,全て「秀品」を用いた。
3.結果及び考察
香港着荷時において,早生次郎柿及び普通次郎柿のいずれにおいても,2℃輸送の方が15℃輸送よりも軟化果実の発生を抑制した。また,早生次郎柿においては2℃輸送のフィルム梱包区で軟化果実の発生が完全に抑制され,15℃輸送でも僅かな発生にとどまった。普通次郎柿についても同様で,2℃及び15℃輸送のいずれにおいてもフィルム梱包区の方が軟化果実の発生が少なく,低密度ポリエチレンを内袋とする梱包の品質保持効果は明確であった。普通次郎柿における従来梱包の「良品」は,「秀品」と比較して軟化果実の発生が多く,低グレードの果実は輸送性が悪いことが示された(図1)。2℃輸送では,香港着荷時の軟化果実発生数が少なかったものの,貯蔵2日目より15℃輸送より軟化果実の発生が多くなり,着荷後の棚持ち性は15℃輸送が良好であることが示された(図2,○と●の比較)。着荷後の保存温度の影響について,10℃保存と室温保存とで比較した結果,10℃で保存した果実の方が室温保存の果実より軟化果実の発生が顕著となり,小売店での保管や陳列に際しては低温ではなく室温を奨励すべきことが示された(図2,○と□の比較)。フィルム梱包区と従来梱包区の保存期間における軟化果実発生の推移を比較すると,フィルム梱包区のほうがやや軟化を抑制した(図2,○と■の比較)。
上記から,低温が棚持ち性へ悪影響を及ぼしたが,これは柿果実が低温感受性青果物であることに起因すると考えられる。従って,香港向け次郎柿の軟化抑制のためには,こうした柿果実の特性に留意した輸送・保存温度を設定した上で,さらにフィルム包装を施すことが有効である。

図1 香港着荷時における各実験区の軟化果実発生率

図2 香港着荷後の保存期間における軟化果実発生率の推移(普通次郎柿)