バイオマス利活用先進事例視察に関する情報

バイオエネルギー事例視察

この項では、「はじめに」の中で、家畜糞尿の第2の利用方法として挙げたメタン発酵について取上げます。

メタン発酵とは

家畜糞尿に含まれる有機物は、時間とともに微生物に分解されていきます。
『堆肥化』の場合、十分な酸素を送り込み、おおむね「好気的」な条件で微生物分解を受けるため、有機物の炭素分は二酸化炭素(CO2)として、大気に放出されます。発酵中は温度が80度以上に上がることもあります。この過程は、有機物中のエネルギーが、微生物に消費され、残りかすが熱と二酸化炭素という形で、大気中に放出されると言い換えることができます。
『メタン発酵』は、この消費されるエネルギーの一部を取り出し、有効利用するものです。メタン発酵では、微生物の分解は、酸素の少ない「嫌気的」条件下で進み、最終的にメタンガス(CH4)が発生します。このメタンガスを燃料として利用するわけです。

メタン発酵のメリットとデメリット

生の糞尿は、放っておくと悪臭を放つようになります。一方で、メタン発酵が終わった糞尿(消化液と呼びます)は、色は黒く見栄えは悪いですが、臭いはほとんど気になりません。ただしこの消化液は、窒素、リン酸、カリといった肥料成分を豊富に含んでおり、田畑への還元が望ましいのですが、田畑には撒ける時期と撒けない時期があり、そのために巨大な貯留タンクを用意することは非現実的であるなどの問題もあります。
 以下にメタン発酵のメリットとデメリットをまとめました。

メリット

  1. 糞尿のエネルギーを燃料として有効利用できる(畜舎の暖房などに利用し電気・灯油代の削減がはかれる)。
  2. 悪臭がなくなる。
  3. 尿だけを処理する場合、直接浄化槽で処理するより、メタン発酵させてから処理した方が、浄化槽の規模は小さくて済む。

デメリット

  1. 余剰のメタンの引取先。発電し電力会社に売る方法もあるが、ヨーロッパに比べ売電単価が安く、収支が合わない。(注1)
  2. 散布できない時期の消化液の貯留槽がいる。または、浄化槽で処理し放流する必要がある。浄化には多額の薬品代がかかる。
  3. 消化液の利用に関して、耕種農家の認識が低く、理解が得られていない。
  4. 消化液は堆肥に比べて水分を多く含むため重く、運搬・散布に余分なエネルギーが必要になる。
  5. 消化液の散布には広大な面積の田畑が必要。(注2)
  6. 施設建設費が高額。(注3)
  7. メンテナンスに手間がかかる。

以上のように、1生産者が導入するには、非常にハードルが高くなっています。
 一方で、北海道鹿追町で運転中の鹿追町環境保全センターや千葉県香取市の和郷園のように、順調に運転を継続している施設もあるようです。

鹿追町環境保全センター

2,000頭(酪農家15軒)分の糞尿などを対象に平成19年に建設され、鹿追町が運転管理を行っています。この施設が黒字で運転できているのは、以下の条件が満たされていることが大きいようです。

  1. 建設費(約13億円)が全額補助金でまかなえたこと。
  2. スケールメリットを生かし、専門の運転管理者を配置することで、安定した運転ができていること。
  3. 糞尿を持ち込む酪農家が自分の牧草地に消化液を還元しており、巨大な貯留槽も、浄化槽も不要なこと。

和郷園

さる2月16日に視察に行ってきました。和郷園は、平成3年現代表理事の木内さんを中心とした5名が、野菜の産直をはじめたことに端を発しています。約20年経った現在では、東は千葉県成田市から西は茨城県の神栖市まで90軒以上の組合員を抱え、さらに、海外への進出も果たすまでに成長を遂げています。平成17年からは、農林水産省のプロジェクト「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発(バイオマス利活用モデルの構築・実証・評価)」に参画し、メタン発酵を軸とした山田バイオマスプラントの日常運転管理を担当されています。
 メタン発酵設備は、最大処理能力が日量5t、牛糞と野菜くずのしぼり汁を原料としており、発生したメタンは、発酵槽の加温や、工場内の軽トラック・フォークリフトの動力として利用しています。消化液については、会員が購入し露地畑に散布しています。
 運転開始から5年が経過していますが、その間に起きたトラブルをその都度解決し、現在まで運転を継続してこられたのには、以下の理由があるものと考えられました。

  1. 農水省のプロジェクトであり、大学や研究所から技術的・金銭的なサポートを得られたこと(建設費負担なし→設備は国の所有。運転費用負担なし→独立採算制を目指している)。
  2. 高度な知識を有する運転管理者を配置することで、種々のトラブルを解決してきたこと。
  3. メタン発酵設備が小規模(受入能力5(t/day))で、会員の圃場で十分消費できていること(この前提として、会員が、JGAP導入など土づくりや環境保全に対する意識が高く、消化液の利用に対する理解があったことも特筆すべき点の一つです)。
  4. 産直農家であるため、生産する野菜の作型・品目が多様で、1年中消化液を散布する場所を確保できること。
山田バイオマスプラント施設全景
山田バイオマスプラント施設全景
メタン発酵槽
メタン発酵槽
原料の野菜くず
原料の野菜くず

消化液

バイオガスフォークリフト


元肥散布用
元肥散布用
追肥散布用
追肥散布用
 

豊橋への適用の可能性

一般的な処理方法である「堆肥化」と「メタン発酵」を比較しますと、堆肥化では、保存性の良い固体肥料を安価な設備で省力的に生産できるが製造工程で悪臭等の問題があるのに対し、メタン発酵では、保存性がやや劣る液体肥料を高価な設備で手間隙かけて生産するが悪臭はしないということが言えます。
 和郷園のバイオマスプラント運転管理をされている阿部さんが論文の中でおっしゃっているように1)、メタン発酵設備は「未利用バイオマスを原料として液体肥料を生産するプラントでありメタンガスは副生物」と考える必要があります。

鹿追町環境保全センターの事例では、畜産農家が自ら消化液を消費し、和郷園では、耕種農家が自らメタン発酵から消化液の消費まで行っています。畜産農家が生産した消化液を、耕種農家に受け渡し利用してもらうという「耕畜連携」を目指す場合、耕種農家の理解という新たなハードルができることも考慮が必要でしょう。

先に紹介した両事例を踏まえて、豊橋での導入の可能性を検討しますと、悪臭の問題に困っており、(1)イニシャルコストのサポートがあること、(2)専門の運転員を配置できるだけの経費がかけられること(大規模化?)、(3)経営規模(糞尿排泄量)に見合った消化液消費地を周年確保できること、という条件をクリアできるなら、導入を検討する価値があると考えられます。

注釈

(注1)
中部電力の平日昼間時間(夏季)売電価格:約13円(/kwh)
中部電力の家庭用ソーラー発電の予定売電価格(低圧、10kw未満):48(円/kwh)
※時間、季節、契約(容量)によって単価は変わります。
(注2)
畑で3(m3/10a)、水田で1(m3/10a)程度と考えられます。
母豚180頭規模で、糞尿混合利用の場合、53haの畑が必要のようです。
(注3)
和郷園の場合、5(t/day)規模で5000万円です。

参考文献

1)農業農村工学会資源循環研究部会論文集第5号

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